≪寄稿≫ 形成外科紹介 山本直人
形成外科は、体表の様々な腫瘍・外傷・醜形・色調異常などの外科的治療を行う診療科です。形成外科ってどんな診療をしているの?と思う患者さんもいらっしゃるかと思いますので、形成外科という診療科について紹介させてください。まず、形成外科と整形外科はよく間違えられますが内容はかなり異なります。整形外科は主に骨・関節・筋肉など運動器の疾患を扱いますが、形成外科は体表の醜形(形態や色調)や機能障害を治療する診療科で、具体的には皮膚や皮下組織の腫瘍、母斑・あざ、顔面や手などの外傷、骨折、熱傷、口唇・耳介・手・足などの先天的形態異常、瘢痕の修正、手術や外傷で生じた欠損の再建手術、褥瘡や慢性皮膚潰瘍、四肢壊死の救済、美容形成手術などがあります。
その内容からすると形を整える、つまり“整形”という言葉がぴったりくるかと思いますが、1950年台に欧米での名称であるPlastic surgeryを日本語に訳す際、すでに日本には「整形外科」という診療科が定着していたため、その名称をあきらめて「形成外科」と命名したという歴史があります。ちなみに中国で整形外科といえば、日本でいう形成外科を示します。形成外科ではレーザーなどの手術以外の治療も広く取扱います。美容外科は形成外科の一分野で、欧米では一般的に形成外科Plastic surgeryと美容外科Aesthetic surgeryとほとんど同義語として認識されています。
身体の中でも、体表や特に外から見える部位(顔や手等)の組織欠損・変形・醜状等に対する悩みは、身体だけでなく心への影響も与えかねません。形成外科はこれらに対し、最善の結果を残すべく診断や治療法の研究開発を行う診療科です。例えば形成外科の特徴の1つに“外見にこだわった治療”が挙げられます。傷あとを目立たなく治す、形態をできるだけきれいに仕上げる、などを常に研究し、結果を出せるように努力しています。たとえば皮膚腫瘍の切除手術でも、単なる切除ではなく、皮膚切開の方向や長さ、深さ、縫合の仕方などを工夫し、できるだけきれいに仕上げるようにしています。顔面骨折の治療も切開創がほとんどわからないように工夫します。また手術用顕微鏡を用いた組織移植術や切断指の再接合術は日本で本格的に始まった分野です。最近では、皮膚腫瘍や外傷といった従来の形成外科治療に加え、高齢化に伴い眼瞼下垂、足壊疽や難治性皮膚潰瘍の治療が増えています。特に治りにくい傷をいかに効果的に治すかという研究は日々進歩を遂げています。
形成外科の対象疾患は、各種の体表の外傷、皮膚軟部腫瘍、難治性創傷、美容医療などに多岐にわたります。さいたま記念病院では、皮膚腫瘍、顔面・手外傷、下腿潰瘍や褥瘡などの慢性皮膚潰瘍、四肢壊疽の救済手術、眼瞼下垂症などの眼瞼疾患、陥入爪の治療にまずは力をいれたいと思います。より高度な治療は自治医大さいたま医療センター形成外科に紹介の上、治療します。外来は予約不要となっておりますので、お悩みの症状等ございましたら、まずは当院形成外科へ診察にお越し下さい。
【形成外科診療】外来:毎週金曜日午前(2023年10月6日より)
【担当医師】
氏 名: 山本直人
現 職: 自治医科大学附属さいたま医療センター形成外科 教授
資格等: 博士(医学)、日本形成外科学会専門医・指導医、同 皮膚腫瘍外科分野指導医、
同 再建・マイクロサージャリー分野指導医、日本創傷外科学会専門医、
日本美容外科学会(JSAPS) 教育専門医、日本臨床皮膚外科学会専門医など。
付記
特別寄稿として、形成外科に関するご紹介文を山本直人先生に執筆して頂きました。
2023年8月25日