さいたま市の災害時医療救護所に関して  (院長)

さいたま市では、災害時には各区に1カ所(北区は2カ所)の計11カ所の病院敷地内に医療救護所が設置されることとなっています。5月24日に大宮区役所で担当者の会合がありましたので、報告内容や今後の検討事項に関して記載します。

1)医療救護所担当者連絡会の内容

参加者は、救護所設置病院、保健センター保健師、さいたま市職員です。まず、2題の基調講演があり、その後各区に分かれて担当者同士の意見交換会がありました。

2)基調講演

ご講演の要旨および特に印象に残った部分を記載します

①能登半島地震における医療救護所の実際+α(さいたま赤十字病院 田口茂正先生)

・山がちな半島で、交通の寸断があり、もともと医療基盤が漸弱な地域。

・事前に決められた救護所の設置はなかった。

・珠洲市では救護所の設置要請から診療開始までに5日間を要した。

・救護所の役割は、クリニックの代替に加えて地域の病院を守る(破綻を防ぐ)ことにある。

②首都圏直下型地震を想定した医療救護所の運営と従事者の役割(さいたま市民医療センター 坪井 謙先生)

・地形としては、台地が大半で活断層は2カ所にあります。

・さいたま市直下地震では、震度は西部でより強く、液状化や全壊建物も多数となります。洪水被害(浸水)は荒川と鵜川・鴻沼川の水系で多いものの、利根川、芝川・新芝川でも発生します。

・避難者は約20万人と推測されます。

・医療救護所の運営には、複数の医師・看護師・薬剤師のみでなく、多数の事務職員が必要となります。

・救護所を病院敷地内に設置することにより、区役所、医師会、医療機関の連携が可能になります。

 

3)見沼区での医療救護所設置に関して

当院の敷地内に設置する計画で、2023年7月に設置訓練を実施しました。

今回の担当者との会合では以下の案が出ました。

・救護所テントは、病院正面玄関の脇に設置する。

・テント脇の広いスペースにブルーシートを敷き詰めて、患者さんの待機および経過観察場所とする。

・救護所の運営は、医師会などからの医師・看護師を中心に行って頂く。

・中等症以上の患者さんは、病院のストレッチャーで院内に移送して、検査・治療を行う。

おわりに

・さいたま市で前もって救護所設置の計画が進められていることは有意義と考えられます。

・災害時には病院自体が被災している可能性もあり、他の病院や救護所との協力や相互支援が必要となります。

・医薬品や医療材料の備蓄には限りがあるため、災害時の供給元に関する協定締結や搬送方法の策定が必要と考えられました。

*災害医療体制に関しては、病院ブログ (2024年1月19日付)にも記載しましたのでご参照下さい。

2024年5月26日

石川 進