医療ドラマを振りかえる (院長)

数々の医療ドラマがテレビで放送されており、最近では心臓外科医が主人公のブラックペアン2が始まりました。懐かしい作品を思い出し、加えて当時の自分を振り返りたいと思います。

 

Ⅰ.外科医を主人公としたドラマ

1)白い巨塔(原作:山崎豊子氏、主演:田宮二郎氏):1978年~

一流の腕を持つ消化器外科医財前五郎が、大学医局“白い巨塔”での権力争いを暗闘の末に勝って教授に昇進したものの、まもなく自分自身が日々手術していた胃がんでなくなるという内容でした。当時医学生であった私は毎週このドラマを見ており、ニヒルな二枚目俳優が演じる外科医に憧れました。卒業後は外科の医局に入りましたが、志望理由は“外科医はカッコ良くて、しかも女性にもてるらしい”ということでした。

 

 

2)医龍-Team Medical Dragon-(主演:坂口憲二氏):2006年~

 当時、末期心不全の患者さんの拡大した心臓の一部を切り取る“バチスタ手術”が世界中で話題になっていました。ドラマでは、優秀かつ個性的なメンバーを集めたリーダーがチームを率いてバチスタ手術の成功を目指すものでした。私は群馬大学にいましたが、日本初のバチスタ手術を行った須磨久善先生の勤務されていた湘南鎌倉総合病院に2か月間派遣して頂きました。

3)ドクターX~外科医・大門未知子(主演:米倉涼子氏):2012年~

『私、失敗しないので』外科医としては一度言ってみたい言葉です。フリーランスの外科医大門未知子が腕一本で様々な病院や医局で活躍する医療ドラマです。私は都立墨東病院に勤務していましたが、手術前の家族説明で「先生は失敗しないのですか?」と聞いた実直なお父さんがおり、皆で爆笑したのを覚えています。

 

Ⅱ.へき地医療をテーマとしたドラマ

  ・Drコト―診療所(主演:吉岡秀隆氏):2003年~

沖縄の離島に赴任した医師の物語です。当初は島民の信頼を得られず、診療所に来る人はいませんでしたが、次第にその誠実な人柄と確かな技術を認められ、村に受け入れられていくストーリーです。私は自治医大卒業後、群馬県山間部のへき地診療所に勤務しましたが、陸続きであるため必要時には市街地の病院に患者さんを搬送することが可能でした。離島では多くの場合は孤立無援の状態であり、さらに厳しい現実があることを同級生から聞きました。

Ⅲ.看護師が主人公のドラマ

新米ナース朝倉いずみはとんでもない失敗をしては先輩に叱られる毎日ですが、患者に寄り添おうとする姿勢が徐々に周りの信頼を得ていくドラマです。長期にわたった人気シリーズなので、現在勤務中の看護師さんたちも見ていることと思います。なお、勤務先が “若葉会総合病院”なのは親しみを感じます。

おわりに

医療ドラマの主人公は実際の現場とは離れた存在のことが多いものの、われわれ医療従事者の憧れであり、届かぬ目標となってきました。自分の腕を頼りにフリーランスで活躍する構図は、医師でもあった漫画家手塚治虫氏原作の“ブラックジャック”が元祖かと思っています。日々の診療はドラマのようにはいきませんが、『夢』として楽しみたいと思っています。

 2024年7月27日

石川 進