夏の水分補給 (院長)
梅雨のさなかですが、今年も熱い日々が続いています。少し早めですが、熱中症の予防も含めて水分補給に関して調べてみました。
1)水分の必要量
通常の生活では1日に約1,200mlの水分が失われます。これを補うためには、1日あたり1,500~2,000mlの水分補給が必要です。食事時の水分摂取だけでは足りませんので、大まかな時間を決めて、例えば起床後、午前中、午後、夕食後、眠前などにコップ1杯(200ml)の水分をとる習慣をつければ、1000mlが確保できます。特に、寝ているあいだは水分が失われやすいため、寝る前と起床後の水分摂取は重要です。
2)体内水分量の年齢による変化
・小児: 新生児80%、小児60%
・成人: 50歳(男60%、女54%)
70歳(男55%、女50%)
80歳(男54%、女49%)
体内の水分量は年齢とともに減少します。
体内の水分量は1日で1割が失われます。そのため、山などで遭難した場合には、食糧を摂取しなくても最大数週間生存できますが、水分は3日間補給されないだけで生存が危うくなります。
高齢者では、もともとの体内水分量が少ないため余力がありません。加えて、口渇中枢の感受性が低下するため、のどの渇きを感じづらくなり、水分摂取量が減少します。そのため、暑さなどの環境の変化などで容易に「脱水」になります。
3)各種飲料の成分と使い分け
「何を飲めばいいですか?」という質問をよく頂きます。
今回、コンビニの棚に並んでいる商品に関して調べてみました。理解しやすくするためあえて商品名を書きますが、同系統のドリンクでは成分は概ね同等です。食塩量、カロリーは100mlあたりの数字です。
食塩量(g) カロリー(kcal)
おーいお茶 0.03 0
爽健美茶 0.02 0
健康ミネラル麦茶 0.03 0
ポカリスエット 0.12 25
OS-1(経口補水液) 0.29 10
コカ・コーラ 0 45
三ツ矢サイダー 0.03 42
屋内で過ごすことが多く汗をあまりかかない場合は、お茶や水での水分補給で十分です。 屋外での仕事やスポーツなどで汗を多くかく場合:水分と塩分を同時に摂取でき体内に吸収されやすいスポーツドリンクやアイソトニック飲料(ポカリスエット)がおすすめです。しかし、スポーツドリンクには糖分(カロリー)があるため、糖尿病の方は要注意です。昔ながらの方法ですが、お茶や麦茶に加えて、梅干(飴) や塩飴を併用するのも有効です。体調不良や胃腸が弱っている場合:経口補水液(OS-1)はスポーツドリンクより速く吸収されるため有効です。ただ、価格も高めなため、特別な時の飲み物と考えていいかと思います。疲れた時のリフレッシュ:コーヒーや紅茶、緑茶、コーラなどですが、カフェインの利尿作用により補給した水分が短時間で体外に排出されてしまうため、夏場の水分補給には不適です。
4) 熱中症の治療
熱中症の症状としては、めまいやけいれん、頭痛、吐き気、倦怠感、筋肉痛などあり、初期の場合は経口補水液での水分補給が有効です。しかし、水分補給ができない場合や症状が強い場合には、急ぎの病院受診が必要です。病院では輸液(点滴)による水分補給をすぐに開始し、同時に血液検査を行います。軽症の場合は、外来で輸液を2本(1000ml)程度行えば通常は帰宅できます。血液検査で明らかな臓器障害(腎臓、筋肉など)があった場合は入院治療が必要です。私が以前都立墨東病院に勤務していた頃、救命センターの医師に「重症の熱中症患者さんは助かるの?」と聞いたところ、「救急搬送されてきたときに意識のある患者さんは助かる」との簡潔な答えが来ました。とにかく、早めの治療が必要だと思います。
私のこと
私はコーヒーが好きなので、起床時から夕方までの間にカフェオレ(砂糖入り)を5~8杯くらい飲みます。糖分が気になりますが、仕事中のエネルギー補給として割り切っています。かつてコーヒーは体に良くないといわれていましたが、最近では循環器疾患の予防効果も発表されており安堵しています。夜以降は麦茶を飲んでおり、枕元にも麦茶のボトルを置いています。カフェインが入っておらず、ミネラルもあるので良いかと思っています。
*付録:6月は紫陽花(鎌倉・明月院)
アジサイの花言葉は花の色によって異なります。しかし、花の色は土の性質によって変化するようで、酸性ならば青色、アルカリ性ならば赤色になるそうです。「七変化」という別名もあるようで、花言葉が「移り気」「無常」「辛抱強い」、「寛容」、「元気」など様々なのも納得できます。不思議な花ですね。
2023年6月27日 石川 進