新型コロナ・5月8日以降 (院長)
新型コロナウィルス感染症の5類移行後の対応に関して、4月後半~5月にかけて計4回のオンライン会議(ZOOM)がありました。今回は現在の感染状況と医療機関の対応に関して記載します。
1)5月8日以降の感染発生状況
発生件数は徐々に増加傾向となっており、埼玉県は全国平均を上回っています。
5/1-7 8-14 15-21 22-28
全国 1.8 2.63 3.56 3.63
埼玉 1.8 3.03 4.42 4.29
*定点把握とは:全国の約5000(埼玉県は261)の医療機関からの週1回の報告をもとに算出した1医療機関当たりの平均患者数です。
②埼玉県の入院患者数
埼玉県内の入院患者数は漸増傾向で、5月第4週は300人台となっています。
5/1-7 8-14 15-21 22-28
1日平均(人) 189 208 282 355
5月8日以降は、原則として症状(発熱、肺炎など)のある方のみに検査を行っているため、4月との単純な比較はできませんが、有症状の方の2割近く(18%)が陽性です。
陽性/検査数(陽性率)
4月 5月
抗原検査 4/21(19%) 6/17 (35%)
PCR検査(迅速) 2/69 (3%) 13/76 (17%)
PCR検査(精密) 7/61 (11%) 6/36 (17%)
計 13/151(8.6%) 25/139 (18%)
2)大学病院の対応
全国の大学病院への調査結果が5月1日に公表されました(回答75病院)。
入院時の検査実施が1/3以上(36%)の病院で継続され、専用病棟も半数以上(51.4%)で維持されています。現時点では十分に警戒しつつ経過を見ている状況と考えられます。
①入院患者や手術患者への抗原検査などの実施方針
「当面は入院患者に対して実施」が36.0%、「当面は手術患者のみ実施」が13.3%で、「5月8日以降実施しない(すでに実施していないを含む)」が30.7%でした。
*入院や手術予定患者に対するPCR検査や抗原検査:5類移行後は公費負担がなくなるため、無症状の入院患者や手術患者全員に対しては保険診療内で検査を実施できず、病院負担で行うこととなります。
②COVID-19患者向け専用病棟について
「引き続き設置している」が51.4%(38病院)、「縮小して設置している」が29.7%で、「既に廃止し、一般病棟で受け入れ」が18.9%でした。
3)当院の現況と今後の対応
現在、当院では入院患者、職員の院内感染はみられていません。しかし、近隣の病院、施設などでは、小規模な院内発症も見られているため、今後も注意が必須です。
当院での現在の対応は以下の通りです。
・入院時の新型コロナウィルス検査:5月7日までは入院の方全員に新型コロナウィルスPCR検査を施行してきましたが、5月8日以降は原則として症状(発熱、肺炎など)のある方以外で検査を行っていません。ただし、手術患者さんに対しては検査を実施しています。
・感染対応病床:旧コロナ病床(感染対応の空調設備あり)の一部をそのまま維持し、感染判明もしくは疑われる患者さんの隔離を継続します。
・外部からの新型コロナ感染の持ち込みを防ぎます。
現在は面会許可となっていますが、可能な限りの少人数、短時間を厳守して頂きます。
・職員を介した感染を防ぎます。
体調不良者は検査結果の判明を待たずに速やかに勤務を休むこととします。
・感染再拡大時の対応
全国的に感染の再拡大がみられた場合は、面会禁止、入院時PCR検査再開を行います。
4)インフルエンザとの相違
最も大きな違いは、有効な内服薬が確立されていないことだと思います。インフルエンザではタミフルなどの内服薬や吸入薬が一般化しており、病院・診療所で日常的に処方されています。新型コロナに対してはラゲブリオ(一般名モルヌピラビル、メルク社製)、パキロビッドパック(ファイザー社製)が特例承認、ゾコーバ(塩野義製薬)が緊急承認されていますが、未だ発展途上の感があります。また、ウィルスの変異によりワクチン自体の有効性も不安定となっています。インフルエンザと同様となるには、有効な内服薬の一般化が必須と感じています。
2023年6月5日 石川 進