日本語の難しさ (院長)
日常会話で自分の意図が伝わらないことや相手の意向がよく分からないことが時々あります。また、マスコミの報道で何かしっくりこない言葉もあります。今回は、私が難しいと感じている言葉遣いに関して書きます。
1)「適当(てきとう)」とは?
職場で「適当にやっておいて!」というと、皆から白い眼で見られます。広辞苑によると2つの意味があり、(1)ある状態や目的などに、ほどよくあてはまること。(2)その場に合せて要領よくやること。いい加減。」とあります。私は「担当者の判断にお任せします」という(1)の意味で使っていましたが、最近では、後者(2)の意味(テキトー)と理解されることが多いようです。
1988年のテレビCM(中外製薬・グロンサン)で「5時から男」という言葉が流行し、出演した俳優高田純次氏は俗称「テキトー男」として認知されています。私は、この頃から「テキトー」の印象が広まったような気がしています。最近は「適切にお願いします」と頼むようにしています。
2)「大丈夫です」とは?
大丈夫の本来の意味は、「危なげなくしっかりしている、間違いがなく確かである」というもので、ポジティブな言葉です。しかし、最近では肯定と否定の両方で用いられています。否定的な場合は、「いいえ結構です、お気遣いなく、必要ありません」といった意思表示になるようです。相手の申し出に「感謝しつつ辞退する」ことだと思いますが、言葉が強いと「余計なお世話です」といった印象も受けます。その場の雰囲気がわからないと判断が難しいので、できれば他の言葉に言い換えた方が良いかと思っています。
3)「遺憾」とは?
様々な謝罪会見の場で、「誠に遺憾です」という言葉がよく使われています。広辞苑によると、「遺憾」とは「思い通りにいかずに心残りなこと。残念。気の毒。」とあります。謝罪会見で「遺憾です」という言葉を聞くと、何か他人事のようで「本当に残念としか思っていないのか」と感じてしまいます。私は当事者や責任者はあいまいな言葉は用いずに、内容を明らかにしたうえで「申し訳ありませんでした」に徹するべきと感じています。「大変お騒がせして誠に遺憾です」と言われても何のことかわかりません。
4)意味を取り違えやすい言葉
調べてみると、意味を取り違えやすい日本語は多数ありましたので、以下に記載します(資料1,2)。私自身が誤解していた言葉もいろいろありました。
① 情けは人の為ならず:人に情けをかけると巡り巡って自分に返ってくる。 →「他人には情けをかけて親切にするべき」とのことでした。
② やぶさかではない:何かをするのに協力を惜しまない。
→「してやってもいいよ」ではありませんでした。
③さわりだけ聞かせる:話や文章の要点、音楽や物語の最も重要な部分を聞
かせること→「話の最初の部分」ではありませんでした。
④破天荒:前人未到の偉業を成し遂げること
→「豪快、無茶、大胆、荒っぽい」ではありませんでした。
⓹役不足:本人の力量に対して役目が軽すぎること
→「本人の能力・実力が足りないこと」ではありませんでした。
資料1:斎藤 孝. 大人の語彙力大全 2018(株)KADOKAWA東京
資料2:文化庁「言葉のQ&A」https://www.bunka.go.jp
2024年4月27日
石川 進