虹の彼方にーオーストラリアの思い出 (院長)

先日、雨上がりに七里総合公園方向に虹が出ていました。とっても久しぶりに虹を見て、かつて夢を追ってオーストラリアに行った頃を思い出しました。今回は、私の思い出話ですがご容認下さい。

1)オーストラリアでの臨床研修

2001年3月より1年半の間、メルボルン大学附属オースチン病院・心臓外科(Brian Buxton教授)に臨床修練医として勤務しました。当時は群馬大学に在勤中でしたが、40歳を過ぎて心臓外科医としての将来に不安を感じていました。英会話が不十分でかつ決して若くない私でしたが、研修の機会を与え頂けたことに感謝して家族でオーストラリアに行きました。

2)メルボルンのご紹介

メルボルンはオーストラリア大陸の南岸にあり、都市圏を含めると人口500万人の街で、シドニーに次ぐ第2の都市です.歴史ある建物と新しいビルとが調和し、自然も多い美しい街です。2002年には「世界で最も暮らしやすい都市」ランキングで1位となっています。住民には、アジア、ヨーロッパを問わず世界中からの多数の移民がおり、英語が不自由な私達には簡単な英語でコミュニケーションをとってくれました。

メルボルンの玄関口:フリンダースストリート駅

ヤラ川からみたメルボルンの風景

 

3)オーストラリアでの生活

私は毎朝7時半に出勤し、夕方まで手術室で過ごしました。手術後はICU専門医が管理を行なうため、外科医は自宅に帰ることができました。私も毎日家族で夕食をとる不思議な日々を過ごしました.夜間及び休日は心臓外科の修練医(3-4名)が交代でオンコール体制をとりました。

子供たち3人は、自宅に近い公立のハイデルバーグ小学校に入れてもらいました。授業料は無料で、英語の話せないうちの子供たちのために週に数回非常勤の先生を呼んで入門編の授業をしてくれました。

入国当初は,やはり英語の壁が厚く毎日身の細る思いでしたが,半年経過後は家族も含めて異国での仕事と生活を楽しむことが出来ました.

4)オージー気質

オーストラリアは1901年に連邦として形成された新しい国です。この国には海外からの移民が多く、多民族による多文化主義を標榜しています.オーストラリア人の性格(オージー気質)はおおらかかつ寛容で,我々のような海外からの住民にも優しく面倒見が良いので大変助かりました。一言でいえば、「まぁ、いいか」という感覚です。

5)休日の過ごし方

休日は近くの公園や車でいける範囲の観光地に行きました.公園には,無料で自由に使えるバーベキュー施設があり,出かけにスーパーでソーセージと若干の野菜を手に入れれば,その日の出費は終わりです.カンガルーはワイルドパークではいたるところにおり、パンの耳をもっていけば十分です。お金をかけずに楽しめかつ食料が安かったのは、薄給の身としては嬉しい限りでした。自然も多く、車で数時間のところには有名な海岸線グレイト・オーシャンロードがあり、日本人を含む多くの観光客が来ていました。

おわりに

・『虹の彼方に(Over the Rainbow)』はミュージカル『オズの魔法使い』の劇中歌です。『オズの魔法使い』はメルボルンで行った数少ない公演のうちの一つです。そのため、この歌は我々家族の強い思い出となっています。今回、虹をみて当時を思い出したのはそのためです。

・オーストラリアでは、本来の目的であった心臓手術の手技を学びました。もちろん虹は越えられませんでしたが、帰国後17年間心臓外科での仕事を続けることができました。

・オーストラリアでは人々の心の広さに助けられ、メルボルンの街での生活を楽しむことができました。家族にとっては最も楽しい時期であったと感じています。

付録:メルボルン再訪(2017年10月)

①ハイデルバーグ小学校

②メルボルンマラソン

2024年6月16日

石川 進