今年の春、大学受験を終えた女性からメールをもらいました。
「医学部を目指して浪人したけれども、今年も力及ばず別の医療職に進むことにしました。」
病院見学に来た縁で小学生の頃から知っている子です。
昨年の夏、悩んでいるという話を聞いて会って話を聞き、励ましました。
「諦めないで。」
そして彼女は今年の医学部受験に再挑戦しました。
ですから結果は私にもたいへん残念でした。しかし、同じ医療の仲間になれるのは素晴らしいことです。
「大切なのは患者さんに寄り添うこと、一緒に頑張ろう。」
そう返事を書きました。医療職は何も医師が全てではありません。医療の現場にいれば自明のことです。
昨年、医学部の不正入試が騒がれたので今年の入試は公正だったはず、だから実力がなかった、と彼女は言います。でも、医師の実力とは何でしょうか。あの難しい数学や物理の問題を解くことが医師の実力でしょうか。
あの子がなぜ選ばれなかったのか。志は高く、礼儀をわきまえ、理性的であり、良心的です。勉強も大好きです。何よりも思いやりがあります。
目や耳を疑う医師が少なからずいます。そんな医師よりもはるかに素晴らしい人材です。
医師を目指したいと思う人は世の中にたくさんいます。私の周りの看護師も薬剤師もリハビリ療法士も管理栄養士もソーシャルワーカーも事務職員も、それぞれの立場で優秀な仕事をしています。できれば医師と同じ立場で、医師と同じように、患者のために尽くしてくれるなら、医療の現場はもっと良くなる、信じてやみません。
医師として、医療者として大切なのは人の気持ちが分かることです。この能力を先駆け的に見つける力が医学・医療の指導者にあるのかどうか。教育者の慧眼が求められます。