セカンドオピニオン外来を開設しました。ほかの病院にかかっている患者さんやご家族に対して助言をおこなう外来です。
セカンドオピニオンと言えば、大学病院やがん専門病院などの超急性期・高度機能・専門病院の医師がおこなうのが一般的です。当院のようなところがそれにふさわしいのか疑問に思われるかたも多いと思います。
少し説明したいと思います。

現在は超高齢化の時代となり、お年寄りの患者さんが非常に多くなりました。お年寄りはひとつの病気だけで病院にかかるわけでは必ずしもありません。
脳梗塞や心筋梗塞の既往があり、肺にも障害があり、歩行や日常生活に不便を感じていることが少なくありません。そうしたお年寄りに胃がんがみつかったとします。
残念ながら早期がんではなく、ある程度進行しているようだと言われました。さてどうしようか、ということになります。

胃がんの治療については日本胃癌学会から診療ガイドラインが出されています。
通常はそれに基づいて治療方針が決まります。早期胃がんであれば内視鏡で取りましょう。遠くへの転移がない場合は手術です。手術にはいろいろな方法があります。胃がんの部位などによってどのような手術が選ばれるか細かく書かれています。
こうしたガイドラインに基づく診療は全国に広がっているので、治療法や手術方針をあらためて別の病院で相談する必要はあまりないと言えます。
もちろん、1人の医師、1つの病院だけでは心配だと思えば、別の医師、別の病院でと思うのもわかります。

一方、90歳、認知症がある、腎機能が悪い、心筋梗塞の既往がある、高血圧の薬を飲んでいる、そして進行胃がんが見つかった、ガイドラインだと治療はリンパ節郭清を伴う胃全摘術、という場合、どうでしょうか。
こうした場合、「手術後の5年生存率は〇〇%、術後合併症の危険は〇〇%、手術死亡率は〇〇%です。手術をする・しないはご本人とご家族で決めてください」という言い方をされることが多いように思います。

実は、5年生存率を除けばこの〇〇%というのはかなりいい加減なもので、きちんとしたデータに基づくものではありません。
上記の90歳の患者さんに当てはまるデータなどあるはずがありません。また、このような難しいことを本人・家族に決めさせるというのはちょっと不親切だな、という気がします。

当院でのセカンドオピニオンの場合、胃がんや併存症の評価のほかに、この年齢のかたの余命は一般にどのくらいか、がんを治療しなかったときはどの程度生きられるか、栄養状態はどうか、普段の生活はどうか、胃がんの症状はどこまで出ているのか、ご自分の病気をどう理解されているか、認知能力はどの程度落ちているのか、不安はお持ちなのか、以前の職業は何だったのか、どのような人生経験をたどってきたのか、どのような死生観をお持ちなのか・お持ちだったのか、住所はどこか、独居なのか誰かと同居されているのか、家族構成はどうなのか、キーパースンは誰か、そのかたの生活はどうなのか、家族の交通手段は何だろうか、などを考えていきます。
医師だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリ専門職、ソーシャルワーカーからの意見も聞いてトータルに考えたいと思っています。

家族の一員となって考えていきたいと思うのです。

セカンドオピニオン外来の詳細はコチラ