日本のコロナ感染はウソのように減りました。ワクチン接種が70%を超え、集団免疫を獲得したからだという説があります。
ドイツ(あるいはヨーロッパ)でもワクチン接種率が70%近くまで行き、7月1日ごろには感染者がほぼゼロに近いところまで落ちていました。ところが、今(11月上旬)とんでもないほど多数の感染者がみられるようになっています。
ドイツの今の状況を見ておくことは日本の次の波を考える上で役立つかもしれません。そのような思いでドイツの最新データを紹介します。
出典は以前(2021/1/5)も紹介したドイツの雑誌社シュピーゲルです。そのオンライン版(無料公開、https://www.spiegel.de)に11月8日時点のデータが載っていました。データの原典は図の左下に時々ある「RKI」です。RKIとは感染症研究で有名なロベルト・コッホ・インスティトゥート(コッホ研究所)です。
まず感染者数の推移です(図1)。ドイツでは日本と同じように感染の波がありました。日本の第2波である昨年の夏の流行(「夜の街感染」)がドイツではありませんでしたので、ドイツの現在の波は第4波*(*ドイツの波に付けます)にあたります。第1波*は昨年の春、第2波*は昨年から今年の年末年始、第3波*は今年の春、そして第4波*が今年の夏〜秋に当たります。第4波*の勢いが強く、感染者数はまもなく過去最多を更新しそうです。ちなみにグラフの横軸の「1.10」は10月1日を表します。ドイツ語では年月日を数字で表すときは日・月・年の順になります。グラフの縦軸には人数を表す数字が並んでいますが、「10.000」は日本語・英語の「10,000」です。図9にあるようにドイツ語の「42,8」は日本語・英語の「42.8」です。ドイツ語のコンマとポイントの使い方がどうして我々と反対になっているのか、いまだに分かりません。
コロナの変異株の動きはどうでしょうか(図2)。日本と同じく7月下旬以降はほぼ100%デルタ株となりました。
感染者数を年齢別に見たのが図3です。
第1波*では80歳以上の高齢者、第2波*では高齢者も多いのですが若年〜中年も多い、第3波*では高齢者が減り若年〜中年、さらに子どもも多い、今の第4波*では子どもと若年が中心、ということが分かります。
ワクチン接種を受けた人と受けていない人での感染はどうでしょうか(今年7月1日以降の第4波*のデータ)。
年齢層別にまず60歳以上の高齢者を見ると(図4)、ワクチンを打っていない人の感染が多いのは事実ですが、打った人でも感染する割合が約1/4を占めています。いわゆるブレークスルー感染が10万人に20人(=1万人に2人)と少ないながらもあることが分かります。
18歳から59歳の若年〜中年ではどうでしょうか(図5)。感染者の絶対数が増えるとともに、ワクチンを打っていない人が感染する割合が高くなっています。
18歳未満になると感染の絶対数が少し増えるとともに、ほとんどの感染者がワクチン未接種者になります(図6)。
ではコロナ感染による死亡者数はどうでしょうか(図7)。
死者数が最も多かったのは第2波*、次いで第3波*、第1波*となります。今の第4波*では、感染者数は最多になろうとしていても死者数はかなり抑えられています。それでも1日100名程度が少しずつ増加しています。
年齢別に死亡者数を見たのが図8です。
どの波であっても死亡者の多くは高齢者です。若年者の感染が圧倒的に多い今の第4波*であっても死亡は高齢者に目立ちます(絶対数は以前の波に比べ圧倒的に少ないのですが)。
ワクチン接種率をドイツ全体で見てみると(図9)、2回目終了者が67.1%、1回目のみが2.6%、合わせて69.7%。日本よりやや少ない数です。それでも2回接種者の割合を年齢別に見ると、高齢者では85.5%、若年〜中年では73.6%と高くなっています。問題は12-17歳で42.8%と半数に達していません。
まとめます。
コロナがゼロ近くになってもすぐまた大きな波が来るのではないかと日本では危惧されています。そうかもしれないし、そうでないかもしれません。日本の第6波は必ず来ると思っていれば間違いはないはずです。もしドイツに学ぶとすれば、全年齢層へのワクチンのさらなる接種、とくに子どもと若年層への接種と高齢者への3回目接種ということでしょうか。
しかしワクチン忌避者が一定数います。その意思は尊重しなければなりません。子どもや若者は重症化しないのでワクチンは不要だとする考えもあります。
その一方で子どもや若者に感染が増えると高齢者のブレークスルー感染も増え、重症化や死亡につながる可能性があります。若者だって稀ながら重症化、死亡もあります。
さて、皆さんはどう考えますか。