レアンドロ・エルリッヒ氏はアルゼンチンの現代芸術家です。錯覚を利用した作品で有名です。
金沢21世紀美術館で「スイミング・プール」を初めて見たとき、「やられた」と思いました。そのときは工事の関係でプールの底に入ることができず、上から眺めるだけでした。それでも奇抜さと芸術性の高さに感嘆しました。
数ヶ月後、プールの底に入るためもう一度金沢を訪れました。
そのときの感想は意外なほど淡白でした。仕掛けが分かっていたからかもしれません。下からの眺めは、上からの眺めには及ばないと分かったからかもしれません。もちろん、プールの底に人がいないとこの作品の楽しさは現れてきません。
この体験からまもなく、東京・六本木の森美術館で「レアンドロ・エルリッヒ展」が開かれました。さっそく出かけました。
日本初公開の作品が多数展示されていました。
海外で大きな話題となった「建物」もありました。
寝転んだ姿を巨大な鏡に写すと、建物の壁にぶら下がったり、宙づりになったように見えるのです。観客が一緒になって作品を作り上げる点では「スイミング・プール」と同じです。
観客に見せるだけでなく、観客が作品の一部になる。そして新たな発見を楽しむ。この発想は自分の仕事にも生かしたい、と思いました。