中学校の入試問題

先日の日曜日、新聞の切り抜きを整理していると2カ月ほど前の中学入試の問題が出てきました。

学力試験については、このブログでいろいろ意見を述べてきました(2019/12/5「OECD学力調査」、12/6「小学生・中学生全国学力テスト」、12/9「医学部入試の問題点」、2020/1/20「大学入試センター試験」)。
思索の底にあるのは「学力とは何か」です。
試験の形式が競争試験なのか資格試験なのかによって「学力」の定義が異なります。それは確かです。一方、競争か資格かによって学力試験の内容が異なってよいのか、という根源を問いたい思いもありました。

切り抜いていたのは、全国紙に載った「開成中学校入試問題・解答例〜算数」でした。左上に「広告」とあります。中学受験専門会社の一面広告です。今年2月に実施された開成中学校の入試問題とのこと。敏感に反応する親や子が大勢いるから全国紙での一面広告になったようです。
時間の余裕があるときに解こうと思って切り抜きました。

私は開成中学校・高校の卒業です。
今年3月まで開成の校長を務めたのは同級生の柳沢幸雄君です。高校卒業までに組変えが何度かあった中で、中学2年、高校1・2・3年と同じクラスになりました。埼玉県飯能市にある私の実家によく遊びにきてくれました(写真参照、許可を得て掲載)。ハーバード大学准教授・東京大学教授を歴任して開成中学校・高校の校長となり、若者の教育を熱く語る名物校長として全国に名を馳せました。最近の朝日新聞(2020/4/14)のインタビュー記事で、新型コロナによる休校について聞かれ、教師と保護者に向かって「通学の意義」を問いかけていました。そして自分の考えを披露しました。例えば「徳川家康はなぜタヌキおやじと呼ばれたか」という質問をオンラインで共有し、チャットで議論すればよい、と言うのです。さすがだ、と思いました。
その柳沢君が校長をしていた時の最後の中学入試問題です。

年甲斐もなく、60年前と同じ期待と不安で挑戦しました。
算数の全4問のうちの2問目がまず目に入りました。
面白いと思いました。

2つのトラックを異なるスピードで走る陸上競技でバトンタッチをするイメージの問題でした。あるいは、時刻表とにらめっこしながら列車の乗り継ぎプランを練るイメージでもありました。
さすが、柳沢君。いい問題だよ。

手元の紙にメモを取りながら思考を巡らせました。手計算で解きました。
30分かけ、やっと辿り着きました。
(2)と(3)の正答は76分、94.4m。
大当たり!祝杯!

でも、褒めてばかりでよいのか。ほろ酔いの中で思いました。
冷静に評価しようと、他の3問に目を移したとき衝撃を受けました。
「60分」。
全4問の制限時間が60分とのこと!
一気に酔いが覚めました。

小学6年の受験生は、もっとスマートに短時間で解く方法を心得ているに違いありません。似た問題を何度も解いているのかもしれません。
だとすると、やはり学力とは一体何なのか・・・。