中学生からの質問、その他

中学生からの質問の残りとその回答を示します(2023/2/4ブログ参照)。口頭で補足したことは追記しました。同じ趣旨の質問はまとめて回答させてもらいました。

Q.どうしたら医師になれますか。
A.大学医学部の入学試験は理系であって、文系ではないと言われます。理系は主に数学・理科、文系は主に国語・社会です。英語は理系・文系に共通です。
医師は本当に理系でよいのでしょうか。患者さんや家族と病気のこと、命のことを話すとき、国語や社会の知識・考え方が絶対に必要です。しかも、思いやりの心も重要です。数学・理科だけで学べるでしょうか。医師に限りません。医療者すべてに共通します。さらに言えば、人間すべてに共通します。
理想の医師は、知識がある、腕が確か、心がやさしい、だと思います。知・技・情、言い換えれば、(ふつうの)あたま・うで・ハートが求められます。これは医師だけの話ではありません。看護師さんも同じです。病院の職員みんな同じです。どんな職業でも同じです。学校の先生も同じです。会社の人も、農業・漁業をされる人もみんな同じです。人間に共通することです。
残念ながら今の日本の入試制度では医学部受験は理系扱いです。理系に向いていれば確かに有利ですが、文系も大切だということを知ってください。ともかく挑戦してみることです。

Q.どんな人に医師になって欲しいですか。
A.知・技・情をめざそうと努力する人。どの職業を選んでも同じだと思う。

Q.どのくらい勉強したら医師になれますか。
A.(私の医学生時代の教科書をたくさん示しました。英語の教科書もいくつかありました。)常に勉強。遊びも勉強のうち。英語ができるともっとよい。

Q.やりがいを感じる場面は。
Q.どんなときに、医師でよかったと思いますか。
A.患者さん、ご家族、仲間に喜んでもらえたとき。自分の努力が報われたとき。

Q.医師という仕事について、いやだったことはありますか。
Q.医師になってから、医療関係のことで悩んだことはありますか。
A.期待にこたえられなかったとき。失敗したとき。自分の努力不足に気づいたとき。

Q.医師という仕事をしていて、一番大切にしていることは何ですか。
Q.患者さんに対して、常に気をつけていることはありますか。
Q.どのように、患者の病気と向き合っているのか。
A.相手の気持ちになって考えること。全力をつくすこと。まちがったときはすぐあやまること。

Q.手術のときは、どんな気持ちですか。
A.体を傷つけるのは、医師以外だと犯罪になります。それを十分心得て手術に臨んでいました。

Q.今までの手術などで難しかったものは何ですか。
A.たくさんあります。ひとつの手術をお見せします。
(実際の手術を示しましたがここでは割愛します。)

Q.手術は、どのくらいの確率で成功しますか。
A.手術に失敗はあるけれど、成功はない。

Q.中学生でもなりうる病気。
Q.今、自分たちが気をつけること。
Q.若い人に気をつけてほしい病気やけがなど。
A.1) けが、かぜ(コロナ・インフル)。ものすごく少ないけれど、がんもある。
2) 体調が悪いときは、学校の先生、保健室の先生、家族にすぐ相談すること。
3) 体を動かすこと、睡眠と休養をとること、3度の食事をとること、バランスの良い食事を、野菜と魚を多めに、塩分はひかえめに。将来の生活習慣病予防は今から。
4)友だちへの思いやり。

Q.予防接種をしても病気にかかるのはなぜですか。
A.予防接種(ワクチン)の効果はワクチンの種類、病気の種類、その人の体質(免疫[めんえき])が関係してきます。免疫というのは体の外から入ってくるウイルスや細菌(さいきん、バイキンのこと)に対する抵抗力(やっつける力)のことです。
たとえば、天然痘(てんねんとう)という命にかかわる皮膚(ひふ)の病気(ぶつぶつがいっぱいできるウイルス病)に対するワクチンはたいへんすぐれていて、ほぼ100%予防が可能です。そのためこのワクチンが全世界で使われて、40年ほど前に天然痘は地球上から消えてしまいました(一部の研究所では研究のために保存しています)。ポリオという小児麻痺を起こすウイルスもワクチンのおかげでもう少しで地球から消えそうになっています。
しかし多くの感染症では、100%あるいは100%に近い予防の効果は残念ながら得られていません。ワクチンの性能を良くすること、体質に合ったワクチンが選べるようになることが必要になってきます。
またウイルス自体もコロナやインフルエンザがそうであるように、時間がたつと自分の遺伝子(いでんし)を変えて、ワクチンの予防効果や免疫から逃げてしまう「ずるがしこさ」があります。新しいタイプのワクチンを開発してもウイルスの身の変わりのほうが早いと、ワクチンの効果は十分ではありません。それでも、少しずつ免疫の力がまさって、いずれ感染の流行はおさまるはずです。ただし、また新しいウイルスが出てくる可能性はあります。感染予防の原則(手洗い、体調管理)をいつも守るのが大切だと思います。

Q.コロナ患者が増え、病院ではどのような変化がありましたか。
A.コロナ(新型コロナウイルス感染症[かんせんしょう])が流行してから病院はたくさんの変化がありました。自分たちが感染しないように、ほかの患者さんにうつさないようにものすごい注意をするようになりました。それでも、病院のスタッフがじっさいに感染してしまうことがありました。もともと病気をもっている患者さんは病院の中でもすぐ感染してしまうことが少なくありません。お年よりや体力の弱っていたかたがコロナにかかって亡くなり、とても悲しい思いをしました。
コロナの患者さんがたくさん入院してくると、ほかの病気の患者さんを受け入れることができなくなってしまいます。救急をことわったり、手術ができなくなったりもしました。
それでもなんとか乗りこえてきました。
患者さんだけでなく、自分の健康、家族の健康のことを考えるようになりました。
コロナの流行は残念ですが、みんなが支え合う大切さを学ぶことができたのはよかったと思います。

Q.研修医の時は、内科・外科など回ると思いますが、その中に解剖医・麻酔科なども回りますか。
A.麻酔科は必ず回ります。解剖医というのは、病理(びょうり)*のことだと思いますが、希望すれば回ることができます。
*病理:顕微鏡(けんびきょう)で細胞を観察して病気の診断をするところ。亡くなった患者さんを解剖して死んだ原因を調べることもあります(病理解剖[びょうりかいぼう]といいます)。

次のスライドを示して授業を終えました。