先日、ご主人がアメリカ人、奥様が中国人のカップルと一緒に食事を取りながら、こちらも夫婦でおしゃべりをする機会がありました。大宮の街の小さなレストランでした。
相手はどちらも60歳前後、ご主人はアメリカの大学の工学部出身でシステムエンジニア、奥様は中国の大学の日本語学部出身で日本語教師。中国南部で出会って結婚し、中国、アメリカ、日本など世界のあちこちで暮らし、仕事をしてきたそうです。現在は日本にいますが、大きな邸宅をシカゴ近郊に持っています。
「人の体は、物質の塊なのか、神の造形なのか。」
私が医師だと知った奥様からの最初の質問がこれでした。
目を合わせ迫るように聞いてきました。
医師を長年していれば、こうしたことを当然考えていて、自分たちに教えてくれるに違いないと思ったようです。あるいは、初対面での単なる面接試験だったのかもしれません。
簡単な会話は日本語でしたが、テーマが難しくなると英語になります。
英語でそんなことを聞かれても困ってしまう、というのが正直なところでした。
「そんな難しいことを議論すると食事がまずくなっちゃうよ〜、ハッハッハ!」
日本語なら笑ってごまかすところです。
英語ではそうはいきません。真面目に答えました。
「考えたこともありません。目の前にがんという病気があれば、外科医はどう切除したらよいか、ひたすら考え、一生懸命それを取りにかかります。事故で大出血を起こしているときは、出血しているところを探してそれを止めようと努力します。そうしたとき、人の体は物質、つまり臓器や組織からできていると思って処置しているのだと思います。ところが、何をしても助けられないという事態もあります。がんの末期などです。そのときは運命だ、神に委ねるということを感じます。」
期待した答ではなかったのでしょう。
「Hmmm」と言われ、すぐ次の話題に移りました。
ボーと生きてんじゃねーよ!
チコちゃんに叱られた気分でした。