新型コロナウイルス感染症が自らのこととして国民に広く知られるようになった半年間でした。
多くの犠牲を払いました。もう少し何とかならなかったかと思う反面、感染症の歴史の中では今回のパンデミックは如何ともしがたかった、とも感じます。
コロナは身近の話題になりました。一般の人がごく普通にPCRという言葉を発しています。「ポリメラーゼ連鎖反応」という本来の意味を知らなくても、日常会話に上るようになりました。
「医療のことは医療のプロに任せればよい」。
数千年にわたり当然のように言われていたことが、コロナの時代になって、変わり始めました。PCR以外にも、ウイルス感染症、抗原反応、抗体などが日常用語となっています。
一般の人が医療のことをこれほど我がごととして語るようになったのは、人類史上なかったことです。けしからん、と言っているのではありません。むしろ、好ましいことだと思っているのです。
思えば、私が大学を辞めたのは、国民への医療教育が理由でした(2019/6/27ブログ参照)。一般の人は医療のこと、医学のことを知らなすぎる。長年、医療にたずさわってきた者として痛切に感じていました。特に、がんについてそう思ってきました(2019/5/28ブログ参照)。決して「上から目線」のことではありません。病気を知らない一般の人、すでに病気になった患者さんとその家族のことを思えばこそ、です。
ですから、医療のこと、医学のことを、仮に知ったかぶりであっても一般の人が口にするのを、私は好ましいと思っています。感染症の専門家ではない医師ですら、いま色々な発言をしています。以前も述べましたが(2020/3/13ブログ参照)、日本の医学界は感染症学を疎かにしてきました。それなのに今になって、と思う一方、これを機に医学界が変わってくれればよい、という思いもあります。ですから、素人とされる一般の人も医療のこと、医学のことをどんどん論じればよいと思います。ただし、学校などできちんとした知識を身につけるのが基本となります。
「医療をもっと身近に!」。
これを目指して今まで活動してきました。
13年前、小学生を対象に「キッズくらぶイン・ホスピタル」の第1回を催したとき(2019/7/30ブログ参照)、協力してくれた研修医や参加された子ども・保護者と一緒に地元のテレビ局の生放送に出演して「医療をもっと身近に」と訴えました(図1)。また、子ども大学での講義では、がんや感染症など医療の話題を取り上げ、将来を担う子どもたちに発信してきました(2019/6/10ブログ参照、図2)。
今回の新型コロナの問題は、総括するには時期尚早です。
しかし、「医療をもっと身近に」を推進してきた立場からすれば、よい時代になった、と中間の小括をしておきたいと思います。