参療のすすめ

前回ご紹介した茨城よろこびの会は年数回、会報「よろこび」を発行しています。
今年の新春号は、創刊100号の記念誌となりました。
私も寄稿させていただきました。
飯田則子会長のお許しを得て、拙稿をこのブログにも掲載させていただきます。
なお「学問のすすめ」は青空文庫に拠っており、漢字・カナ遣いは現代風に改め、句読点・括弧を挿入してあります。

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会報「よろこび」100号、誠におめでとうございます。
これまでの活動に深甚なる敬意を表します。これからも益々発展されますことを願いまして、「参療のすすめ」をご紹介します。福沢諭吉の「学問のすすめ」になぞらえています。
少し堅苦しくなりますがご容赦ください。

(諭吉)「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生れながら貴賎上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資(と)り、持って衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。(初編)
(解説)封建主義・身分制度を打破し、新時代の平等主義を築こうとする力強い言葉です。「参療のすすめ」も同じ考えに立ちます。医療では皆平等です。患者・家族も自由な対等の立場で診療に参画しましょう。

(諭吉)人間の事業はひとり政府の任にあらず。学者は学者にて私に事を行なうべし、町人は町人にて私に事をなすべし、政府も日本の政府なり、人民も日本の人民なり、政府は恐るべからず近づくべし、疑うべからず親しむべし。(四編)
(解説)政府に任せてばかりではいけない、自分自身でも考えていこう、同じ日本人の政府なのだから恐れるのではなく近づこう、疑うのではなく一緒になって考えよう。熱く語っています。参療について言えば、大切な命は皆共通です。診療を全て医師に任せるのではなく患者自らも医師と一緒になって考えていきませんか、ということになります。

「学問のすすめ」は独立した国家造りを目指しました。「参療のすすめ」はそれほど大げさではありません。せめて自分の健康・病気については自身が主体的に関わっていきましょう、ということです。
現実の医療現場ではハードルがいくつもあります。医師と親しく話せない、立場がずっと弱い、というのがまず問題になるようです。医師との関係は確かに難しいところがあります。その場合のアドバイスです。医師以外の医療者とまず話してみたらどうでしょうか(身近な看護師への相談、相談室の活用など)。敵対的な態度は取らずに素直な気持ちで悩みを打ち明けてみてはどうでしょうか。
医師の信頼を獲得するには自分も病気の知識を身につけることが大切です。まさに「学問」です。できる範囲で結構ですので、医療のことを少しでも勉強しましょう。その上で医師ともう一度話し合ってみましょう。「政府」(医師)はどの時代でも「国民」(患者)の評判を気にします。「国民」(患者)のほうから押せば「政府」(医師)もよい方にいずれ変わります。諦めないでください。私も応援します。
難しいな、難しいかな、と思ったときはどうぞご遠慮なくご連絡ください。
一緒に考えたいと思います。

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参療のことを話すと、「患者の権利意識を徒らに高め、医療現場は困る」と言う医師がいるのは事実です。変革の過渡期にはこうした誤解が生じるのもやむを得ません。150年前、福沢諭吉が庶民一般に学問を勧めたときもおそらく似たことが言われたと思います。こうした誤解はいずれ消滅することは歴史が示しています。