女性診療

女性目線の考え方の大切さを前回述べました(2021/3/15)。

新着の月刊誌「総合診療」(2021年3月号)がたまたま「女性診療」を特集していました。これを機に「女性」をあらためて勉強しようと思い立ちました。
特集の編集者は、女性医師の片岡仁美先生(岡山大学病院総合内科・総合診療科ダイバーシティ推進センター)。巻頭言でこう述べています。
「わが国に初めての『女性外来』が設立されてから、約20年が経過しました。しかし、そのニーズはますます増えることはあっても、完全にニーズに応えられているとは言えない状況ではないでしょうか」。

一冊の本との出会いが女性診療に目を向けるきっかけになったそうです。その本とは天野惠子編著「行き場に悩むあなたの女性外来」(亜紀書房、2006年)。
この本で片岡先生は「女性特有の疾患や男女で臨床経過が違う疾患があること、そして女性の一生は『女性ホルモン』の変動に大きく影響を受けていること」を知ったとのこと。「医療における性差を実感するにつれ、自身が年齢を重ねていくにつれ、その奥深さ・豊かさに惹かれ、また患者さんの訴えもよりよく理解できるようになりました」。

本特集は、女性診療についての総論3編と、ライフステージ別(思春期・青年期・性成熟期・更年前期・更年期・更年期以降)の病態・疾患についての23編(コラムを含む)から成っています。執筆者はすべて女性医師です。

印象に残った項目は、摂食障害、DV被害、微小血管狭心症、甲状腺機能亢進症、骨粗鬆症、線維筋痛症でした。
私は医師になってまもなく48年。多くの女性患者さんを診てきたつもりです。今回の特集を読みながら各病態・各疾患の女性患者さんが次々思い出されました。
極端な痩せのため精神病院の鉄格子をすり抜けて脱走した摂食障害(摂食異常症)の若年女性、DVの結果として臓器を提供した(と思われる)中年女性、繰り返す胸痛発作が微小血管狭心症によるのではないかと思われる高齢女性、肺炎と脱水の治療後も頻脈が続きようやく甲状腺機能亢進症と診断できた超高齢女性、ビスホスホネート剤(骨粗鬆症の薬)の長期使用で非定型骨折(普段みられないタイプの骨折)が生じた中高年女性(それなりの症例数あり)、全身痛に対し除外診断の結果として線維筋痛症(疑い)と診断するも治療に難渋している中年女性。

漫然と診療してきた医師にとって女性診療は難しいというのが正直な感想です。しかし、溜め息ばかりついていても仕方ありません。まずは一歩、前に出て精進してみようと思います。