先週末、いばらき子ども大学の開校式があり、そのあとの特別授業を担当しました。
授業の1回目ということで、茨城県内の各キャンパス合同で行われました。600名余の小学4-6年生が茨城大学の講堂に集まりました。
いばらき子ども大学はNPO法人が中心となって6年前から毎年開いています。12月ごろまで、県内7ヵ所のキャンパスに分かれておよそ毎月1回様々な「大学なみ」の授業が行われます。
今年の開校式では、中学2年生の女子生徒が卒業生として後輩にメッセージを送りました。その卒業生にとって子ども大学で最も興味深かった授業は、株式の売買だったそうです。
そこから社会学に目覚め、将来は外交官になりたいと話していました。きれいな発音の英語を交えての挨拶でした。
私の特別授業は「病気の『ひみつ』」。人体の解剖学と生理学から始まり、病理学・臨床医学へと進み、最後は予防医学でまとめるという欲張った内容でした。
いくつかの疾患を取り上げ、多くの病気は喫煙、過飲酒、偏食、塩分過剰摂取、野菜不足、運動不足、肥満などの食生活・生活習慣がリスクになることを伝えました。子どもの時からバランスの良い食事を摂り、減塩(薄味)に慣れることが大切だと言いました。
医学用語は言い換えをせず、漢字もそのまま使いました(全ての漢字にふりがなを付けました)。そんな難しい言葉や内容を小学生が理解できるか、と心配される大人も多くいました。しかし、子どもの学習能力は底知れないと思っています。
それが証拠に、質問が時間内で終わらず、授業終了後も次から次へと続きました。
Q:「白血病は白血球のがんということですが、赤血球のがんはあるのですか?」
(私の回答(A):白血病よりは少ないですが、あります。真性多血症と言うんだよ。)
Q:「肺炎球菌は厚い莢膜(きょうまく)があるから退治しにくいのだと思いますが、どうしてワクチンが効くのですか。」
(A:すごいね、莢膜を知っているんだ。肺炎球菌ワクチンは、莢膜に対して抗体を作るようにするから効くんだ。年をとると肺炎球菌への免疫が落ちてくるので、肺炎球菌ワクチンを打っておいたほうがいいんだよ)
Q:「アルツハイマー病の脳は萎縮するとのことですが、脳が萎縮すると死ぬことになるのですか。」
(A:脳の萎縮そのもので亡くなることはあまりないけど、アルツハイマー病のかたはとっさの判断や行動ができないことが多いので事故に遭ったり、転んで骨折して寝たきりになったり、誤嚥といって食べ物や唾液が肺に入って肺炎をきたしたりして、亡くなることが多いのではないかな)
Q:「アルツハイマー病ではアミロイドβが溜まるから認知症になるということでしたが、寝ている間にアミロイドβが洗い流されるって本当ですか。」
(A:よく知っているね。最近言われている説だよね。Gリンパ系と言って寝ている間に脳の細胞の周りが緩んで
脳脊髄液が流れ込んできて、アミロイドβなどの汚れを洗い流すって言われるようになってきたんだ。本当かどうかまだ証明はされていないけど、かなり有力らしいよ。寝たあと頭がスッキリするよね。それも眠っている間に脳が掃除されるからかも知れないね。睡眠は十分にとろう)
いずれにしても、後生畏るべし。
印象に残ったことをもう1つ。
質問の長い列に並んでいた女の子がたった一言「私のお母さんは乳がんで亡くなりました」と伝えて去って行きました。混雑に紛れてそれ以上詳しいことは聞けませんでした。
不思議な体験でした。