私は国民全員が参加する医療を願ってきました。
医療の向上は、医療者だけの努力では限界があり、受療者の参加が必須だと考えてきました。医療の向上のためだけではありません。自分の命は自分で守るという原点が人間にはあると思うのです。
そのために市民・県民に向けての医療教育を実践してきました。一般の人向けの講演会にも積極的に関わってきました。しかし参加の多くはリピーターです。国民全員に医療のことを知ってもらうには学校での医療教育が不可欠だと考えるに至りました。
地方自治体の教育委員会に入り、その可能性を模索したことは以前も述べました(2019/12/6、2020/6/10)。簡単な話ではありませんでしたが、教育現場でも医療を教えることへの熱意を感じることができました。
特に、がん教育はがん対策基本法の成立とがん患者の会の強い声を背景に学習指導要領の中に組み込まれました(2021/1/28ブログ参照)。
その新しい学習指導要領の全面実施は小学校と中学校ではそれぞれ一昨年度、昨年度に始まっていましたが、高等学校では今年度(令和4年、2022年)からです(図)。
そこで、小学校、中学校、高等学校の保健では今どのような医療教育が行われているのか、教科書を購入して調べてみました。いずれも、さいたま市で採用されている教科書です(小学校・中学校は昨年度、高等学校は今年度の発行)。
通読すると、小学校、中学校、高等学校いずれにおいてもレベルの高い医療教育が行われるようになったと感じました。
まず発達段階に応じた知識、とくに心と体・生殖機能への理解を求めています。さらに、将来を見据えた予防医療、生活習慣病とくにがんに関する知識、心肺蘇生法を含む救急医療、感染症の基本が記述されています。
「保健」という名で習得すべき医療の基礎知識が充実してきていることを嬉しく思いました。可能であれば医療現場を実際に見てもらいたいと願っています。
教科書の内容をコピーするのは著作権に抵触するためお見せすることが叶いません。お子さんやお孫さんに児童・生徒がおられればぜひ手にとって読んでみてください。私が購入した教科書は、出版社のホームページにサンプルや説明が載っています。それをみてもよいと思います。
*小学生用(「年間指導計画作成資料」参照)
**中学生用(24ページ「がんの予防」・「熱中症と放射線」参照)
***高校生用(「教科書のご紹介」→「目次」→「保健編 (44項目)」参照)
図.学習指導要領改訂スケジュール(2020/10/23文部科学省初等中等教育局教育課程課資料*より抜粋、一部加筆)。
*https://www.mext.go.jp/content/20201023_mxt_sigakugy_1420538_00002_004.pdf