日本メディカルイラストレーション学会の認定講習会が12月8日(日)午後、都内で開かれました。重症患者の診療と処置を行い、急いで移動しました。どうしても参加したかったからです。
元々この講習会は今年9月8日(日)に開かれる予定でした。台風15号のため3カ月後に変更となりました。受講料をすでに振り込んでいましたし、好きな手術画の勉強になるので、這ってでも行きたかったのです。
A-4とA-2の2講座を聴講しました。講義形式でしたが、手術記録の図に込める意図の出し方などたいへん参考になりました。最新の2D/3Dのソフト・ハードの情報を得ることもでき、有意義でした。
日本メディカルイラストレーション学会は、この分野の泰斗であるレオン佐久間氏が中心になって2016年に設立されました。私はその前年、たまたま佐久間氏と臨床外科学会でご一緒し、その縁故で推薦を頂戴して昨年会員にさせていただきました。
最近の手術書や手術記録には術中ビデオの画像を切り取って貼り付ける体裁がしばしば見られるようになりました。これでは手術の意図をうまく表せません。
強調と省略を使い分け、手術のコンセプトと手法を的確に表現するのが手術図の醍醐味です。
手術記録は患者にとって重要な情報です。外科医は患者のためと思って手術記録を記載すべきです。私は若い頃、その重要性に気づきませんでした。手術記録をコピーすることはなく、メモの保管もいい加減でした。そのため、大学卒業の1973年からドイツ留学前1986年までの手術資料は手元に残っていません。
1988年以降は全手術の記録を手元に残しています。3997件の全麻手術に関わりました。年平均130件、月平均11件になります。晩年、県立病院の院長を務めていた8年間の自分の手術総数は1065件です。年平均133件、月平均11件。壮年期と同じペースで手術に関わっていたことになります。
術者のときは手術記録を自ら書き、コピーして手元に残しました。図は当初、ボールペンで描いていました(例:腹部大動脈瘤手術)。1993年、Adobe Photoshop 2.0が出たときマッキントッシュPC・Agfaスキャナー・Sharp昇華型プリンターのハードウェアと一式で購入し(総額240万円、家内が泣いていました)、手術の図をこれで描き、手術記録をプリンターで印刷するようになりました(例:十二指腸乳頭部腫瘍局所切除術)。しかし、これだと時間がかかり過ぎるため、鉛筆でスケッチしてスキャンし、そのデジタル画像をPhotoshopでレタッチして色付けするようになりました(例:膵頭部がん切除術)。やがてPhotoshopだけで描く白黒の図も多用するようになりました(例:膵頭部温存十二指腸切除術)。その後は、再びボールペンによる手描きに戻っていきました(例:外傷性腹腔内出血・十二指腸離断に対する手術)。
今年3月、メスを置きました。最後の手術は3月25日の巨大脾のう胞に対する腹腔鏡補助下脾摘でした。
手術の図を描くことはもうありません。寂しくないと言えば嘘になります。
しかし、審美眼は鍛錬していきます。
手術は、技術としてのアートであり、美としてのアートでもあると思っています。