小学校でのがん教育

茨城県で小学5年生100名ほどにがんについての授業をしてきました。
がんの授業は、中学生や高校生、一般の人を対象に何度かしたことはありますが、小学生には初めてでした。

がん教育に熱心な人たちは「小学校からのがん教育」を早くから訴えています。一方、教育界からは異論もあります。いたずらに恐怖心を植えつけないか、という心配です。2人に1人ががんになり、3人に1人はがんで亡くなります。がんで苦しむ(苦しんだ)身内のいる児童がいてもおかしくありません。稀ではありますが、小児がんの体験者もいます。実際、今回の授業のことをあらかじめ保護者にお伝えしたところ、何名かについては授業を聞かせないで欲しいという要望があり、別室での対応という配慮を学校はとりました。

今回、小学校からの要請を受けてがんの授業を行ったのには2つ理由があります。
「大切なことは隠す必要がない」というのが1つ。
もう1つは、がんの予防についての話、すなわち、禁煙・適正食事・運動・適正体重・節酒などの生活習慣の改善は、がんのリスク軽減ばかりでなく、糖尿病や脳卒中、認知症のリスク低下にもなることを強調したいからです。とくに野菜・果物を食べる習慣、薄味への慣れは、小さいときに培われます。将来のために今から知っておくべきことを教えたいというものでした。

茨城県教育庁や文部科学省の小学生向けがん教育教材を参考にしました。併せて、小学生が興味を持ちそうな工夫を自分なりにしてみました。

授業がうまくできたかはよく分かりませんが、小学5年生は恐るべき好奇心を持っていることに感嘆しました。
授業の最後に質問を募ったところ、たくさんの手が挙がりました。
「治療の難しいがんは何ですか。」
「がんの症状は何ですか。」
「がんの種類はいくつあるのですか。」
「痔だと思っていたら大腸がんだったという話を聞きました。大腸がんと痔との違いは何ですか。」

本質を突いていると感じました。
一生懸命答えました。まるで医学部の授業のようだと思わず呟いてしまいました。
医師になって欲しい、看護師になって欲しい、というのではありません。
「将来どのような職業に就こうとも、自分の体のことは知っておいて欲しい。病気の予防に努めて欲しい。」と願うだけです。

最後に、気をつけるようにと話したのは、がんになった人の全てが生活習慣に問題があったからではない、ということです。原因の不明ながんはたくさんあること、たとえ生活習慣に問題があったとしても、決してその人を責めてはいけないことを強調しました。