戦後のベビーブームは戦勝国にも敗戦国にも起きました。
戦勝国のアメリカ、フランスは1945年の終戦からまもなくベビーブームとなりました。敗戦国の日本では団塊の世代が生まれました。
問題はそのあとです。出生数を3つの国で比較したのが図1です。1900〜2010年の時間軸をおおよそ合わせてあります。
第二次世界大戦後を見ると、アメリカでは比較的長い間ベビーブームが続き、ブームのあとも緩やかに上昇しています。フランスではベビーブームは比較的小さく短いもののブームのあともほぼ横ばいに推移し、緩やかに減って、また緩やかに増えています。日本は2国に比べ極めて短い間に団塊の世代が生まれ、その後、団塊二世で増えたものの急激に減少して今なお下降しています。
この差は何によるのでしょうか。
移民の有無が1つの要因だろうと思います。しかし、それだけではないように思います。日本の急減、すなわち少子高齢化はなぜ生じたか、を解析する必要があります。
日本経済新聞が2009年11月9日に掲載した記事があります(図2)。「少子高齢化なぜ対策後手に?」という疑問に対して解説した記事です。その答は「経済対策に追われ、改革遅れる」です。本文から引用します。

「迷信で出産が避けられた丙午(ひのえうま)の1966年よりも合計特殊出生率が低くなったのが89年。「1.57ショック」と呼ばれ、少子高齢化対策の必要性が認識されるようになり、国は育児休業の法制化や保育所整備を進め始めた。でも90年代前半にバブル経済が崩壊、その後は足元の景気対策を優先せざるを得ない状態が続き、改革が遅れた。」

経済専門の新聞が、経済優先こそ少子化の元凶であることを認めているのです。
そもそもバブル経済が異様でした。そのバブル経済が崩壊したら、景気対策に追われて少子化が進んだというのです。経済至上主義は、少なくとも少子化対策には馴染まない考えだと分かります。
アメリカやフランスでは必ずしも経済至上主義ではないという話が伝わってきます。日本でも、団塊の世代誕生の教訓からすると、経済至上主義ではなく、生きる喜びさえあれば少子化は自ずと解消するのだと思います。
「少子化は国の存亡にかかわる」と主張しながら「経済対策のエンジンを最大限にふかす」と叫ぶ政治家を私は理解できません。

図1

図2