私は多くの病院で診療にたずさわってきました。
どこの病院でも、特定の患者さんに対してさまざまな職種が診療方針を話し合っていました。
チーム医療とも、多職種連携とも呼ばれるものです。急性期医療や在宅診療の現場で、多職種連携が行われている様子を実際に見てきました。
しかし、さいたま記念病院に赴任して、その多職種連携のイメージが激変しました。
例えば、90歳女性の心不全。救急搬送された救命センターで一命をとりとめ、後方病院の当院に転院。
しかし、食事は進まず、ほぼ寝たきり。認知症もある。さてどうするか。心不全の治療には何が良いか。看護の立場から見て現状はどうか。食事はどうしたら良いか。誤嚥しないか。リハビリは何をしたら良いか。キーパースンはどこにいるのか、何と言っているのか。少し栄養を上げよう。こんど嚥下機能をみよう。もっとリハビリを導入しよう。なんとか元の家に帰そう。こんど家族と話そう。
寝たきりに近い超高齢者(それ以外の患者さんも全員!)に対してこれほど熱心に、しかも多人数で、各職種が丁々発止とやり合う現場を私は見たことがありません。
決して形式に流れず、たとい認知症が進んでいても、そのかたのベストは何かを、常に真摯に考え、わがごとのように寄り添い、堂々と議論する様子に胸を打たれました。
写真は、医師3名、看護師2名、栄養士・リハビリ療法士・医療ソーシャルワーカー各1名が議論している風景です。