我が師の恩

仰げば尊し我が師の恩。
自分の小中高の卒業式ではよく歌われていました。今はほとんど聞くことはありません。5-6年前、ある看護学校の卒業式に招かれたとき久しぶりに聞きました。歌詞のひとつひとつを噛み締めて聞き入りました。
「仰げば尊し」は、文語体で分かりにくい、教師を讃美しすぎる、立身出世を煽る、という批判がいつの頃からか出てきました。やがて「旅立ちの日」や「さくら」に変わっていきました。

先日、突然、「我が師の恩」に巡り会いました。
日本の卒業式ではありません。アメリカのアカデミー賞授賞式でのことです。
今年のアカデミー賞の話題は、SFアクション「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞を含む最多7部門で受賞したことです。この話題はすでに伝わっていました。数日後その作品の監督のひとりダニエル・シャイナート氏の受賞挨拶が記事になりました*。
* https://abcnews.go.com/GMA/Culture/teacher-reacts-shoutout-2023-oscars-director/story?id=97827082

「子供のころこんなことを夢みていました。賞を獲得したら壇上に上がって、僕たち兄弟を閉じ込めた学校の先生をののしってやろうと。だから・・・、というのは冗談です。私の人生を変えてくれたのは学校の先生です。公立学校の先生たちです。ダミアー先生、ツール先生、チェンバーズ先生・・・」。
「私を教育してくれました。私にインスピレーションを与えてくれました。つまらぬ人間になるなと教えてくれました」。

この授賞式の実況をダミアー先生はテレビで観ていました。ダミアー先生はアラバマ州の公立学校で30年以上教え、今は現役を退いています。シャイナート監督が小学校4年のとき自分が担任であったことを覚えていて、教え子の晴れの舞台を観ていたのです。
突然自分の名前が聞こえ飛び上がってしまいました。
「あの子のことはよく覚えていますよ。でも、ほかの子と何か違う特別なことをした覚えはありません。私の何が彼の心に残ったのか、私には分かりません。皆と同じように接していましたから」。
シャイナート監督の両親への感謝は、学校の先生たちのあとでした。

大人になって仕事をするようになるとまず感謝するのは一般に、直近の「師」に対してです。上司であったり、指導者であったり、先輩であったりします。親への感謝も当然述べます。が、言われてみると、今の自分があるのは学校での学びに基づいています。
小学校の恩師山川誠一先生のことはこのブログで書かせていただきました(2020/1/7)。あらためて読み返し、我が師の恩を思うのです。
学校教育はそれほど大切なのだ、今も昔も変わらない。再認識させられました。