新聞切り抜きリストから(1)

今年1月6〜8日の3日間の私の新聞切り抜きリストを示します。

今で言う新型コロナウイルス感染症(肺炎)を初めて知ったのは1月7日のこの記事です。発生源は「中国中部」とあります。翌8日の記事は「中国武漢」となっていました。以後しばらく、私は新型肺炎を「武漢肺炎」とメモしていました。それから3カ月以内に全世界を席捲するパンデミックになるとは予想しませんでした。ただし、予感はありました。SARSの初発のころを知っていますのでピンと来ました。ひょっとして、と思いました。

他の項目についても簡単に述べます。
1月6日の記事にあるヘリウムは、MRIという画像診断機器の稼働に必要な液体です。だいぶ以前からヘリウム不足は言われていますが、さらに不足の危機が迫っているようです。当院にはMRIがないので関係ないと言えば確かにそうです。しかし、他施設のMRIが動かなくなると、当院の診療にも関わってきます。ヘリウムはぜひとも確保しなければなりません。「当院にもMRIを!!!」とクリスマスパーティのときに理事長に強く懇願したのですが、残念ながら良い知らせはまだ届いていません。
同じ日の渥美和彦氏の訃報は感慨深いものがありました。医学生の頃、渥美先生の講義を聞きました。人工心臓をヤギに埋め込み数日間生かしたという話でした。数日間だけか、と思うと同時に、熱い語りの中に将来の夢を見ました。この渥美先生が、さいたま記念病院の設立に関わっていたという話を昨年末に知りました。そのこともあって訃報を切り抜きました。

アメリカのインフルエンザ死者が1万人を超えたという記事、そう言えばありました。今では新型コロナの騒ぎでインフルエンザはすっかり影が薄くなりました。新型コロナもそのうち忘却の彼方になって欲しいものです。
1月7日の記事にあるトヨタの近未来の街づくりは、夢を感じ切り抜きました。翌日、別の新聞がこの話題を扱っていました。しかし、新型コロナの影響をトヨタもまともに受けています。この街づくりは遅れそうです。
脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療薬ゾルゲンスマは保険適用が見込まれ、薬価は1億円を超えるとされます。日本の皆保険制度を維持しようと思えば国は新薬の薬価を何としても抑えたいところです。一方、薬価を安くしすぎると国内の製薬会社は新薬開発の意欲がなくなり、海外メーカーの独占を許してしまいます。ジレンマを考えさせる記事だと思い、切り抜きました。
1月7日と8日には、発達障害や認知症の人への偏見がテーマになった記事が続きました。発達障害のカミングアウトが増えてきたのはよいことだと思います。認知症についても、誰もがかかる病気だからこそ、一般の人にもっと理解があって欲しいと願います。
著作権法改正の話題は興味がありました。ICTの急速な進歩を考えると従来の著作権は緩めるべきだと私も思っていたところです。日本新聞協会の配慮で学校の授業では新聞記事を無償で使用できることになっています。しかし学会や一般向けの講演ではかなり高い著作権料を支払わなければなりません。約100名の聴衆に向けた90分の講演で、1つの記事につき7千円、6本で計4万円余りを某全国紙1紙に支払ったことがあります。新聞以外の他の著作物でもなお敷居の高さを感じます。引用あるいはダウンロードを許してもらえれば、講演での活用が見込めます。今回の切り抜きリストも題名だけでなく、実際の記事を少しでも引用させてもらえると読む人への説得力が増します。この改正法案は3月10日に衆議院議案として受理されました。もっとも、この法案が通っても新聞記事の無償の引用は数行までです。出典を明示してもダメです。もう少し緩めてもらえないものでしょうか。