年末年始の恒例になったと思います。
1年間の出生数が「また下がった」というニュースです。
日本では、2019年の出生数が86万人、しかも想定より2年早く90万人を割った、というので大騒ぎです。

少子化のことはこのブログでも取り上げました(2019年8月20日のブログ参照「少子化の原因は経済優先にある」)。
「少子化は国難だ」と憂える国のトップがそもそも少子化を促しているのではないか、と指摘したつもりです。
2018年の日本の出生率(合計特殊)は1.42でした。移民で増やすのは別として、人口は当然減ります。

世界はどうでしょうか。
2019年12月28日のドイツ・シュピーゲル誌 は南部シチリアからイタリアの出産事情を伝えていました。2018年のイタリアの出生数は44万人。出生率は1.29と、ヨーロッパのなかで最低でした。ヨーロッパの平均は1.60、ドイツは1.57とのこと。イタリアでなぜ子どもを産まないのか、産めないのか。失業率の高さ・出産への財政支援の少なさ・出産休暇の短さ・子育て体制の貧困さ・保育園/学校の不足などが挙げられていました。

韓国の2018年の出生率は0.98という低さです。2019年12月25日の朝日新聞 によれば、その要因は、雇用への不安・重い育児負担・広がる「産まぬ選択」などがあるとし、若者が生きにくい社会構造が問題だとしています。

こうした要因は日本でも30年以上前から指摘されてきました。要因分析は十分なのに、実行が伴わなかったということです。
実行に移した自治体が日本にあります。有名なのは岡山県奈義(なぎ)町です。2014年の出生率が2.81と急上昇し、俄然注目されました。町が実行したのは徹底した子育て支援でした。自衛隊基地が町にあることから財政上恵まれているのかもしれませんが、10年間で1.4から倍の2.8に上げたというのは、子育て支援のお蔭です。もちろん、出産は目的ではなく結果です。結局、子育て支援に尽きます。それは生き方の問題ではなく、当たり前の施策にすぎません。

シュピーゲル誌

朝日新聞デジタル

看護師は全国的に不足しています。病院は看護師の待遇改善に努め、その退職を食い止めようと躍起になっています。新たな人材の確保に一生懸命です。子育て後の職場復帰にも熱心に取り組んでいます。そのためだと思います。看護師の妊娠・出産が増えています。妊娠・出産・育児で休暇や時短を取られると病院の看護師不足が進みます。夜勤者が減ります。看護加算が保てません。そのため「〇〇さんご懐妊」の報告が上がってくると、露骨に嫌な顔をする人がいます。それは間違いだ、と言い続けてきました。

「おめでとう!と言ってあげなさい。」
「では休まれた分はどうするのですか?」
「周りが支えてあげなさい。」
「無理です。」
「工夫しなさい。」

前任の県立病院で女性看護師の合計特殊出生率を看護局の協力で調べたことがあります。2.44でした。子育て支援がいかに重要か。病院、さらに言えば国のあり方を示していると思います。