日本環境感染学会 in 横浜

先週土曜日、横浜で開催された日本環境感染学会に出かけました。
学会そのものに参加したのではなく、同時開催された第323回ICD講習会に出席するためでした。このことは2019年12月2日のブログでもお知らせしました。
当時、新型コロナウイルスは発生していませんでした。しかし、新型コロナウイルスの中国での発生と日本国内での流行という新しい局面を迎え、さらにダイヤモンド・プリンセス号が係留されている横浜で開かれるということで今回の日本環境感染学会は俄然注目を浴びました。事実、新型コロナウイルス感染に関するいくつかの重要な発表があったようです。
ICD講習会のテーマはあらかじめ決まっていたので新型コロナウイルス感染に特化した講演はありませんでした。
ただし、東京慈恵会医科大学感染制御部の中澤 靖先生が「シンクからCRE(カルバペネム耐性腸球菌)が検出された事例」の講義の中でダイヤモンド・プリンセス号の環境調査に入ったときの話をスライド入りで紹介し、重要なのは感染防御の基本に徹することだと強調していました。感染防御の基本は手指衛生に尽きるわけですが、一方、現場での対応の基本は、1)現場ラウンド、2)現状分析、3)スタッフのブリーフィング、4)上層部とのコミュニケーションだというのです。その意味でCRE対策も新型コロナウイルス対策も変わりない、とのことでした。

ちなみに、それ以外の講習会のテーマは以下の4つでした。
1. 産婦人科外来で水痘患者が発生した時
2. 妊婦結核への対応事例
3. 病院における麻疹対策と対応
4. 特殊病態下におけるTDM(治療薬物モニタリング)
いずれも想定外と言ってはいけない状況の貴重な報告でした。

こうした報告を聴くと、感染症との遭遇は常に覚悟しておくのが医療者の務めだということが分かります。しかし、万全を尽くせないことがあるのは、所詮、医療者も人間であり、万能でないことを示しています。万能でないことを責められると辛いものを感じます。それでも全力を尽くすのが我々の務めなのだと痛感しました。