生きる、生きる、生きる

茨城県にいたとき、書家の川又南岳氏と親しくさせていただきました。
個展が開かれたとき、いくつかの書を購入して手元に持っていました。
すべての書に書かれていたのは「生きる」の言葉です。
紙に書かれた「生きる」。板に書かれた「生きる」。いろいろでした。

自分が、あるいは、誰かが、人生の岐路に立ったとき、その書を眺めて元気を持とう、眺めてもらって元気になってもらおう、と思っていました。
その後、さまざまな方との出会いがありました。
人生の岐路に立った人たちに1枚、また1枚と、その書を届けていきました。

最後に残った3枚の「生きる」をある患者さんに差し上げました。
がんの中でも最も手強いがんにかかったかたです。手術直後に贈りました。現役の看護師さんでした。3倍の思いを込めて贈りました。私が茨城を離れる直前のことです。

1年が過ぎたとき、「元気ですよ」というお便りをいただきました。
4月は私の誕生月です。それを覚えていてくださいました。Happy Birthdayのオルゴールが付いていました。

川又南岳氏の「生きる」を差し上げたいと思う人が、今、います。
残念ながら、「生きる」の書はもう私の手元にはありません。

前述の看護師さんにお願いして3枚の「生きる」を飾った額の写真を送っていただきました。
意中の人に届くことを願っています。