第5波 振り返りの会

新型コロナウイルス感染症の第5波が収まり、病院には落ち着きが戻っています。
先々週はさいたま市の、先週は埼玉県の関係者による「第5波 振り返りの会」がいずれもオンラインで開催されました。
第5波では何が問題だったのか、第6波に向けて何をどう改善すべきか、が議論されました。

参加した医療機関は新型コロナウイルス感染症の診療に関わった病院です。担当者・責任者の話は当院で経験したことにほぼ重なります。
「感染症や呼吸器の専門医がいない中で対応を迫られた」、「軽症だという触れ込みで送られてきたら実は重症に近かった」、「重症化していく患者を高次医療機関に送ろうとしても断られた」。

こうした厳しい状況の中で何とか乗り切ったというのがどの病院からも聞かれた声でした。
一方で、追い詰められたからこそ「底力」が発揮できたということも言えます。
例えば、中等症患者を担当することになっていた病院(当院もその位置付け)では、前述のように重症化寸前の患者を高次医療機関に送れませんでした。やむを得ず、人工呼吸管理を回避できる可能性のあるハイフロー・ネーザル・カヌラ(HFNC)を初めて導入した病院が多くありました。当院も同様でした。すると、HFNCが著効することが分かり、以後、重症一歩手前の患者を多く助けられるようになりました。薬の使い方もそうでした。症例数の多い病院や経験者から必死に情報を集めました。薬剤を組み合わせ、かつ思い切った量を使うことで手応えを感じました。

問題点として最も多く挙げられたのは「なぜもっと早く治療ができなかったのか」です。したがって今後の対策は、入院が必要な患者を全て速やかに入院できる体制作りです。
第5波のピーク時、病院は戦場のようでした。
同規模、あるいはそれ以上の患者が発生した場合、全て速やかに入院できるようになるか。現状では難しいように思います。
新型コロナの教訓は、非常時の医療の在り方ではないでしょうか。「非常時」は「災害時」と言い換えてもよいでしょう。医療者は今まで培ってきた知識・技術をフルに活用していくしかありません。しかし個人や個々の病院に頼るだけでは無理があります。大規模災害時は既存体制の拡大だけでなく臨時の「野戦病院」新設で対応するほかないように思えます。医療者が専門外だと言わずに全員参加すればスタッフの確保はできるはずです。