先日の日曜日、第9回日本美術展覧会(日展)に出かけました。
休日を利用して行こうと思っていてもなかなかチャンスがなく、最終日にようやく足を運ぶことが出来ました。晩秋の穏やかな1日でした。
彫刻・日本画・洋画・工芸美術・書の5科への応募総数11173点、入選作品(一部、無鑑査作品)は3037点。全部はとても見きれません。特選以上の作品を中心に鑑賞しました。知っている作家の入選作品も見逃さないようにしました。各科の会場の入り口に作家名のリストが貼り出されています。その中から名前を探すのも楽しみのひとつです。
今年は次の4名のお名前を見つけることができました。
彫刻の能島征二(のうじま せいじ)氏・中原篤徳(なかはら あつのり)氏、洋画の町田博文(まちだ ひろふみ)氏、工芸美術の林 香君(はやし かく)氏です。能島氏・中原氏・町田氏は茨城県在住、林氏は栃木県在住です。
私が茨城県と栃木県に居たとき折にふれて鑑賞してきたかたがたでした。
今回の日展では作品の下にQRコードが置かれていました。スマートホンで探索すると「作者のことば」が出てきます。作品に込めた思いを知って鑑賞することができました。
会場で撮った写真を添えてご紹介します。
①能島氏の作品「家族 -渚にて-」(石膏)。「人々は、いつの時代も平和でおだやかな生活を希望している。こんな想いを彫刻に表現したい」。私が校長を務めていた看護学校の創立50周年記念に母子像「天使の椅子」を設置させていただきました。東日本大震災では水戸のアトリエが被災し、復興第一作として制作されたのが金色のブロンズ「祈り」。座して瞑目し左手を挙げる鎮魂の女性像でした。
②中原氏の作品「無垢の予兆」(石膏)。内閣総理大臣賞を受賞されました。「何でもない、どこにでもいる青年の姿を制作したかった。「一つぶの砂に 一つの世界を見る」にはじまるウィリアム・ブレイクの詩『無垢の予兆』から想を得て、塑像による制作を続けた」。中原氏とは個人的な繋がりはありません。自作品解説を茨城県近代美術館で何度かお聞きするうちファンになりました。彫像の顔から放たれる素朴な一徹さにいつも釘付けになりました。
③町田氏の作品「雪湖畔」(油彩)。背景はオーストリア・ザルツブルク。「険しい山々に抱かれた冬の湖水には、雪化粧の街並みや峰々が映え、見渡す構図に思わず息を呑む」。新築された笠間市立病院・地域医療センターかさまに大作「グラナダの丘」を寄贈されました。群青(ぐんじょう)の空が病院のイメージを大胆に変えました。
④林 香君氏の作品「波動」(陶)。「我々人間の想念や意識も波動であり、全ての物質及び人の想念や意識は影響しあい、愛や平和を祈り、融合し、尊重しあう波動であることを願う」。20数年前、宇都宮市郊外のパーティで初めてお会いしました。以来その魅力に惹かれ、いくつかの小品を購入してきました。温かさと鋭さとを併せ持つ作品は、人生の艱苦を乗り越えた者でしか作り得ないと思いました。
第9回日展の受賞作品および特選作品の解説が公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=M1gVrxRQfTQ
各作家の生の声は、過去のものになりますが、次の動画で聞くことができます。
1) 能島征二氏
https://www.youtube.com/watch?v=uEAVBwp3dhA
「能島征二展が開幕」茨城新聞動画ニュース
2) 町田博文氏・3)中原篤徳氏
https://www.ibakira.tv/movies/view/104130
令和4年度茨城県移動展覧会「茨城の美術セレクション」ギャラリートーク@つくば美術館
4)林 香君氏
https://www.youtube.com/watch?v=ETxo-MSbTKw
https://www.youtube.com/watch?v=MfBKDYqfxWs
「結美(むすび)のひととき#15・#16」とちぎテレビ
埼玉にせっかく越してきたのです。この地でも美術作品に触れたいと思ってきました。しかし環境が大きく変わり、コロナの影響もあって、病院に閉じこもる生活が続いています。残りの人生は限られます。何とか楽しみたいと願っています。