茨城がんフォーラム2021

昨日の日曜日、水戸市で「茨城がんフォーラム2021〜がんと共に生きる〜」が開かれました。前年に続いてのフォーラム開催です(2020/9/27ブログ、2020/10/23ブログ参照)。前回はビデオのみでしたが、今回はコロナも落ち着き、現地開催となりました。

私は昨年と同じく、「主役はあなた〜参療と検診について〜」の講演を担当しました。茨城県には「がん検診を推進し、がんと向き合うための県民参療条例」という他に類を見ないがん条例があります(図1)。いわゆる参療条例です。参療のポイントは、患者・家族の皆さんも医療に関わることの重要性です。「主役はあなた」だということを強調しました。ただし、医療を理解するのは簡単ではありません。こうした講演会を含めあらゆる機会を捉えて勉強しましょうとお願いしました。自分の命、家族の命に関わることなのですから。

最新の医療については、茨城県立中央病院腫瘍内科部長の石黒愼吾先生が担当しました(図2)。まず腫瘍内科とは何かを説明したあと、発がんのメカニズム、がん治療について説明していきました。とくに、がん治療では多職種・多診療科・医科歯科連携などのチームワークが重要だと強調していました。最新の医療として、がんゲノム医療に触れてもらいました。従来の臓器ごとの括りではなく、がん細胞の遺伝子の変化に基づいて治療方針を立てることができるようになりました。ただし、がん遺伝子検査をしても有効な薬剤がみつかるのは10-15%にすぎない、治療は基本的に自費診療である、がん遺伝子は変化し続けるため現時点での情報が入手しにくい、などの課題があることも述べていました。

県内医療施設から16題のポスター発表がありました(図3)。医療関係者による審査の結果、那珂記念クリニックの安孫子陽一氏らの「AYA世代をメインとした血液疾患オンライン患者会の現状」と、筑波大学附属病院の関 健吾氏らの「化学療法レジメンの見直しによる薬剤投与期間の短縮効果」が優秀賞に選ばれました。一般のかたも審査に参加する参療特別賞には、東京医科大学茨城医療センターの高梨将大氏らの「前立腺永久挿入密封小線源治療における医療安全の取り組み」が選ばれました。私も投票に参加しましたのですべてのポスターを丁寧に読んでいきました。医療安全や多職種の関わりがテーマになる発表が多くみられ、現場での努力にあらためて敬意を表しました。

茨城県を代表するキャラクター ねば〜る君と納豆お兄さんによる「がん予防講座」では、生活習慣の改善(禁煙・節酒・食生活改善・運動習慣・適正体重)を楽しい掛け合いとパーフォマンスで訴えていました。ねば〜る君とは今まで何度も会って握手までしましたが、背丈が突然7メートルに伸びて直ぐに縮む仕組みがいまだに分かりません(図4)。

2人のがんサバイバーによる対談「がんを乗り越えるためのヒント」は医療者にとっても貴重でした(図5)。
フリーアナウンサーの笠井信輔氏は悪性リンパ腫、お笑い芸人ペナルティのワッキー氏は中咽頭がんをわずらい、ともに数ヶ月の入院治療を乗り越えて仕事復帰を果たされています。印象的な言葉をいくつかメモしてきました。「諦めないで欲しい」・「がんになったことを強みにして生きる」(笠井氏)、「工夫しだいで楽しめる」・「自然に接して欲しい」(ワッキー氏)。
2人とも話すことを職業としています。ユーモアを交えながら闘病生活を赤裸々に語ってくださいました。一般のがん患者さんも様々な思いで闘病されているはずです。口に出さなくとも実に多くの思いで過ごされていることに思い至るべきだと感じました。

茨城がんフォーラム2021は今年11/20〜12/19に動画公開されます。現地に来られなかった方はぜひご覧ください。

図1

 

図2

 

図3

 

図4

 

図5