雨さえ降らなければ通勤は電車と歩きです。自宅から大宮駅まで徒歩10分、電車で8分、七里駅から病院まで徒歩25分です。
大圓寺や竹林の脇を抜けて車のほぼ通らない道を歩く楽しみを前にも書きました(5月21日)。梅雨の晴れ間が続くとわかり、今週も往復の歩きを楽しんでいます。
昨日の朝でした。七里駅を降りて間もなく、後ろから若い男性がさっと私を追い越して行きました。
すらっとした背格好、黒の上下に黒いバックパックを背負い、フットカバーを履いて素足の足首を見せながら、追い抜いて行きました。長い脚でどんどん進むものですから、私の短い歩幅ではとても追いつけません。
街道を渡る横断歩道の赤信号で少し追いつきましたが、また歩き出すと瞬く間に離されます。無理に競争する必要はないと分かっていても、なぜか追いかけました。どこへ行くのか、どうしても知りたくなりました。団地につながる道を進むのを見て確信しました。同じ病院の職員だ、と。 最後を確認したいと思い、短い脚をせわしく動かしました。そして、その姿が病院に吸い込まれるのを遠くから見届けました。
この話を昼休みに、病院の食堂で一緒になった池辺健二先生にしてみました。大学同級生で、毎週火曜日に診療支援をしてくれています。すると、彼は「僕がこの病院に勤めていたときは毎日、七里駅から大圓寺を通って歩くと言うか、走っていたんだ。最速は12分を記録したよ。」
「30年もそうしたの?」
「最初は車だったけど、20年は走ったかな。」
う〜ん、まいった。
自分が見つけた秘密の道だと思ったのが大きな間違いでした。
考えてみると、あの道は絶対にお勧めです。だからとっくに知られた道だったのです。
何でも自分が一番だ、自分が最初だ、と思う性根が情けなくなりました。
研究でもそうでした。手術術式でもそうでした。
たかが散歩道です。悔しさなどあるわけがありません。同好の士がいたことが嬉しくなりました。皆、病院が好きなのかも、とも思いました。
恰好いいあの男性に院内でふと会うのを楽しみにしています。