階段での出来事

先日、外来から病棟に向かって急いで階段を上っていく途中、1人の女性とすれ違いました。すれ違った瞬間、声を掛けられました。
「今日が最後です。」

振り向くと、病棟で折に触れお世話になった看護師です。
手に小綺麗な紙袋を持っていました。同僚からの餞別でしょうか。
「次の職場に行くの?」
さり気なく笑顔で返しました。
「いえ、休みたいのです。」

しばらく沈黙の時間がありました。
何と答えてよいのか。
戸惑っていると、先に応えてくれました。
「疲れました。」
続けて言いました。
「先生が来てから変わると思ったけど、変わらなかった。」
じっと見つめられました。

言葉に詰まりました。やっと一言、
「ごめんなさい。」
間を置いて、付け加えました。
「元気でね。」
そして、上と下へと別れました。

「疲れました。」
重い言葉として残りました。