笠間日動美術館で「鴨居玲展〜Camoyの生きざま」が開かれています。7/18までですので残り日数は僅かです。
鴨居玲(かもい れい)のことは、前任地の笠間市で笠間日動美術館に何度か通ううち知りました。
佐白山の麓の竹林に立つ瀟洒な美術館です。いくつもの企画展を鑑賞してきました。特に印象に残っているのは2008/3/23佐伯祐三展の会場でのバイオリンコンサートでした。「クールシュベール国際音楽アカデミー in かさま」の一環としてカザフスタンのエルジャン・クリバエフが演奏を披露しました。佐伯祐三の絵が四面に展示された部屋でした。私は佐伯の絵のすぐ下の席で至福の時を過ごしました。
こうした企画をする美術館です。その後も足繁く通いました。
2016/4−5の企画展「鴨居玲 死を見つめる男」で初めて鴨居玲を知りました。美と醜が入り混じった人物像に圧倒され、言葉を失いました。そのとき購入した長谷川智恵子氏(日動画廊副社長)の同名の本により、鴨居玲の57年の生涯と自死への軌跡を知りました。
今週水曜日、久しぶりに茨城に行ったとき、笠間日動美術館で「鴨居玲展〜Camoyの生きざま」が開かれているというポスターを目にしました。
埼玉に暮らし始めて2年余。こうした情報を見逃していたことに驚くとともに、這ってでも行こうと思いました。そして行ってきました。
またもや魂を揺さぶられました。この男に惹かれるのは、やはり人間の美と醜だとあらためて思いました。
没後36年になります。5年ごとに回顧展が開かれています。今回見逃されたかたは2025年をお待ちください。全国数カ所ではありますが、必ず没後40年回顧展が開かれるはずです。もっとも、笠間日動美術館には鴨居玲のアトリエが常設で再現・展示されています。それを静かに眺めるのも悪くないと思います。
美と醜。賢と愚。生と死。
酒をあおり、睡眠薬を飲み、意識朦朧の中で遺書を書き、ガス栓を開く。その「2晩3日」を繰り返した挙句、最後は、エンジンをかけたままガレージの車の運転席で絶命したと言います。今回の展示には端正な万年筆の遺書、赤のマーカーで書きなぐった遺書、黒鉛筆による乱れた板書の遺書。
自画像、老人像、酔っ払い像、空に浮く教会の絵。その多くの作品とともに展示された時期の異なる遺書のいくつか。鴨居玲の人生そのものが芸術だと思わざるを得ませんでした。そして、自画像(絶筆、1985)が示すように、私に向けられた鋭くも愚鈍な眼差しを無視することはできませんでした。