現在、私が担当する入院患者はこの病院にいません。

「院長は患者を無理に担当することはない。」
かつての病院で言われました。
「できれば手術はやらないで欲しい。」
こうまで言われました。
「なぜ」と聞くと、「何かあったら病院として困るから」とのこと。

ありがたい忠告だと思い、一層の注意を払って手術に入りました。
前の病院で関わった全麻手術は、院長としての8年間に1036例、名誉院長としての4年間に341 例でした。自分が術者になることはほとんどなく、後輩の外科医を指導しました。
私への紹介で手術になる場合であっても、ほぼ同様の役割分担でした。

「術者は若い先生にしてもらい、私が指導します。私には若い人を育てる義務があります。研修医が術者でも指導医が助手を務めれば、逆の場合と成績は変わらないという論証があります。私の経験でもそうです。むしろ、若い人が術者になると、寝ずの診療をしてくれるので、何かあったときの成績は良いという感じすらあります。私はいずれ死にます。手術のできる外科医を残さねばならないのです。そうでないと患者さんが困るはずです。ぜひご理解ください。その代わり、結果の全ては、指導する私にあります。」

現在、手術はしていません。全て任せています。したがって、こうした話はもうありません。
しかし、何らかの形で関わりたいと思っています。心配であればメッセージを伝えるようにしています。
今、遠く離れた3人の運命を見守っています。神奈川、栃木、茨城・・・。
精一杯生き抜いてほしい。
そう願うばかりです。